「私どうしたらいいんですか? あえて言うならわかったことはただひとつ、あれだけ色々あると、物事は一概には言えない、ということくらい」
「それがわかればしめたものよ!」
「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」 遙洋子(筑摩書房)
読みはじめたら、とまらなかった。おもしろい。文章が、だろうか。状況が、だろうか。いや、それだけではない……ここから伝わってくるのは、「学ぶって、おもしろい!」というパワーだ。
遙洋子というタレントが、言葉でケンカするトークショウの場で勝つことを願って上野千鶴子に弟子入りする。そんな彼女に上野はいう。
「相手にとどめを刺しちゃいけません」
「あなたはとどめを刺すやり方を覚えるのではなく、相手をもてあそぶやり方を覚えて帰りなさい」
とはいえ、ところは東大だ。なにを言われているのかさえわからない、わからないことがわからないから質問さえできない。あまりにわからなすぎて、「やっぱり私はバカだ! 何度読んでもわからない、やっぱ、ついていけないんだ!」とパニックになる彼女の横で、「このレジュメ、いったいなにがいいたいんですか?」ということのできる学生に感じるコンプレックス。それでも次から次へと襲い掛かってくる試練を乗り越え、不用意な言葉に容赦のない上野に怯えながら……著者は、楽しんでいる。
「学ぶ」ってことはおもしろい。中学の勉強より高校のほうが、そして高校の「お勉強」よりも大学の「学問」のほうが断然おもしろい。わからないことだらけで身体が拒絶反応おこしても、山積みの文献を前に青ざめても、それでも……やっぱり、おもしろい。
この本を読みながら、無性に「学問」がしたくなった。
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