「―――そうだ。できれば、発売日が今日(ボージョレ・ヌーヴォー)の最新刊が入っていたら、それが読みたいな」
「素人カースケの世紀の対決」(「名探偵の肖像」所収) 二階堂黎人
講談社
しょっぱなにいってしまおう……わたしはこの「名探偵の肖像」という本、全体はあまり他人に勧める気はない。が、しかし。この「素人カースケの世紀の対決」は……どうか、図書館ででも本屋ででも読んでもらいたい、と切に思う。
ところはミステリー専門店《舞羅運(ブラウン)》。ディナー読書用のメニューが掲示されたそこには、たとえばこんな書籍メニューがある……
「ブラウン神父の醜聞 THE SCANDAL OF FATHER BROWN G・K・チェスタトン 1935年 創元推理文庫 時価」
「心理試験(創作探偵小説集1) 江戸川乱歩 初版 函 春陽堂 大正十四年 三十三万円」
そう……ここは食事を楽しむレストランならぬ、読書を楽しむ《読書ラン》。読む本に悩んだときには、雰囲気や好みを告げるだけで《読むリエ》がぴったりの本を探してくれるのだ。
そして展開されるカースケと評論家豪徳の世紀の対決。選ばれた文章と、一辺が二ミリ程度の紙片から、だれのどの作品かということをあてるのだが……まあ、この世紀の対決の行方は読んでもらうとして、この《読書ラン》、このやたらマニアックな対決。
絶対ありえないことだからこそ笑える……のかもしれないな、と我に返ってふと思う。
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