「≪カッチリ解決いたします≫とか」
「うーん。≪カラッと解決いたします≫とかね」
「卵消失事件」(「カラット探偵事務所の事件簿1」所収)乾くるみ PHP文芸文庫
県内第三の人口を誇る倉津市で謎解き専門の探偵事務所を開設した古谷謙三。「俺」、井上は古谷とは高校時代の同級生で、元新聞記者。バリバリ働きすぎて過労で倒れ、それがきっかけで退職し、いまでは古谷の助手のような身分になったのだが……なにせ資産家の三男坊に生まれ、苦労知らずの古谷のやることだから、ボロいビルなのに内装はやたら高級な家具を用いた洋館の書斎風。新聞広告や宣伝チラシは美学に反するとのたまって、タウンページにさえ載っていない。このままでは客はまったく来ないのでは……? と暇を持て余していたある日、ようやくやってきた最初の客は、古谷がやりたくないといっていた浮気調査の依頼人だった。しかし、よくよく話を聞いてみると、そこにはパックに入っていた卵が消失するという事件も絡んでいたようで……――
連作短編集。探偵小説の読みすぎとしか思えない探偵とその助手の話だが、中身はけっこう本格だったり。日常のささいな謎から本格的な暗号まで、なかなか手広く扱っている探偵事務所なのである。
それにしても、「謎解き専門」探偵事務所とは……現実にあったら、いくら金持ちの道楽でも続けられないと思う(笑)。
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