「ラテル、まとめてぶっ壊すなよ。あれじゃあ市民もまきぞえだぜ」
「なんだ、おまえらしくもないことを」
「おれの的を横盗りするな」
           
    「敵は海賊・海賊版」 神林長平  早川書房

 この物語は、CAW・システム・ロングピース社開発の著述支援用人工知能によって書かれた物語である。そのため、「CAWを利用して書いていたつもりが、どうやら利用されていたのはわたしのほうらしい」ということになっていることには要注意。
 さて、広域宇宙警察・太陽圏・火星ダイモス基地所属の対宇宙海賊課(宇宙海賊課)の一級刑事ラテルとアプロ。海賊をとらえるためには市民の犠牲もなんのその、海賊以上に恐れられ、嫌われている海賊課の刑事だが、特に黒猫型異星人のアプロはその強靭な胃袋と体力とでラテル以外の誰にも対処できないようなお荷物刑事。そんなふたりが名高い宇宙海賊?冥・ツザッキイを追いかけるが、そのころ、ヨウ冥はフィラール星の女官長シャルファフィンと名乗る女から、行方不明になった王女の探索を依頼されていた。
 「敵は海賊」シリーズ第一弾だが、実際には「狐と踊れ」に収録された短編が最初であり、この物語の中でもしょっちゅう触れられている(しかもシリーズを重ねても何度も触れられることになる)女海賊モーナとラテルの恋物語は、その話を読まないとちょっとわかりにくいかもしれない。しかも「海賊版」と銘打っているとおり、ラテル、アプロ、ヨウメイなどに<海賊版>が増え、どちらが本物でどちらが偽物なのかわからないほどの混乱ぶりを発生させる。そのあたり、神林の言語マジックが好きな向きにはたまらないが、ちょっと……読みにくい、と思ってしまう人はいるかも。
 ただし、これを我慢するとこの先の「敵は海賊・猫たちの饗宴」「敵は海賊・海賊たちの憂鬱」などなどは読みやすいので、さらさら読めることは請け合い。
 神林……読者を増やしたいなら、シリーズ一作目をもっと読みやすくすればいいのに(笑)。ともかく、がんばって読んでください! シリーズまとめて読むと絶対はまります。オススメ。



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