「同じカードは二枚も要らない。どちらかがスペアだ」
「ダブル・ジョーカー」柳広司 角川書店
陸軍大学校を出たエリート中のエリート、風戸哲正陸軍中佐は、欧州との近代戦における諜報機関の重要性を強く訴え、機会をみて参謀本部にその重要性を講義するつもりだった。しかし、ある日、参謀本部に呼び出された彼は、すでに秘密諜報機関が存在し、実働しているという事実を告げられる。D機関――だがそれは、風戸の考える秘密諜報機関とはまったく性質を異にする存在であり、これまでの軍の常識を覆すような機関だった。当然、軍内のD機関に対する反発も大きい。風戸は、軍人以外の“地方人”を重用しているD機関に対し、軍人からなる秘密諜報機関、風機関を立ち上げ、D機関に対抗する。だが、同じカードは二枚も要らない。生き残るのは、どちらか。そこで、風戸はある諜報活動をきっかけに、D機関の追い落としをはかるが……――
「ジョーカー・ゲーム」続編。
前回はD機関の内部にいるそれぞれの働きがクローズアップされていたかのように思えるが、今回は、D機関の外にいる人間から、D機関の活動を眺めるような仕掛けになっている物語が多い。それは、D機関と対抗した風戸であり、“魔術師”結城に敵愾心を燃やすドイツ人であったりする。彼らはD機関の恐ろしさも、結城の“魔術師”ぶりも知っている。細心の注意を払って、だまされまい、見破って先を越そう、と努力するのだが、それでもいつしか結城中佐の思うがままに操られている。
物語の中で、結城中佐が登場するシーンはごくわずかでしかない。しかし、この圧倒的な存在感はどうだろう。「ジョーカー・ゲーム」を超えるおもしろさ。オススメ。
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