―――あにい、星がでたぜ、やばいよ。
                    
 「あにい」(今江祥智メルヘンランド) 理論社

 朝子のとうさんは船長さんで、朝子はほとんどかあさんとのふたり暮らし。朝子はかあさんのことを別にかわってるとは思わなかったけれど、友だちのかあさんとは、どことなくちがう気が、年ごとにしてきた。そんなかあさんがある夜、寝言でいったのが、この言葉。
 ―――あにい、星がでたぜ、やばいよ。
 いったい、かあさんのどこを押したらあんなせりふがでてくるのだろう……?
 今江祥智の作品に出てくる人物がわたしはどれも好きだ。
(これにしましょ。これにきィめたァ)
 と、六つの女の子にもどったみたいに心のなかで声をあげるばあさま(「心ならずも」)。
 大人みたいにしとやかにおじぎして、
 ―――よろしゅうおねがいします。
 とあいさつする女の子(「黒いピーターパン」)。
 六人でかかってきた相手をあっさりとのしてしまう姉ちゃん(「四輪馬車」)。
 何人もの姉に囲まれて自分も女の子みたいに育った男の子(七番目の幸福))。
 どこにでもいそうな、ちょっととんちんかんな、こころやさしき登場人物たちが交わす、どことなく抜けているふんわりした会話。
 この本に収められているのは男の子が女の子と出会う……そんな、物語たちでもある。
 今江祥智の作品に描かれているような、すまして大人のことばをつかってあいさつする風のように可愛い女の子、そういえば最近、見ないなあ……


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