そしておれたちは戻った。本来おれたちが属しているところ、仲間が待ってる場所へ。
「池袋ウエストゲートパーク」 石田衣良 文春文庫
池袋の工業高校を卒業し、実家である池袋の果物屋の仕事を手伝っている「おれ」、真島誠。就職するのもだるいし、頭もよくないからといって家の手伝いをしているだけのマコトだが、ふとしたことがきっかけで、池袋のギャングボーイズたちを動員し、女の子の首を絞めてまわっていたストラングラーを捕まえることに一役買う。以来、人探しやトラブルの解決など、ろくでもない話がマコトの元に舞い込んでくるようになって……。
短編集。といっても中編並みのものも多い。
物語は池袋を舞台に、マコトのもとにもちかけられたさまざまな事件、ヤクザの娘の失踪や少年達の抗争などが描かれている。どの集団にも属さず、それでいていざというときに頼りになる友人には恵まれているマコトの存在が、この物語を魅力的にしていることはいうまでもない。事件をきっかけにクラシック音楽にはまり、本を読むようになり、ついには雑誌のライターのようなものにまでなっていくという点で、マコトの存在は物語の登場人物の中でも特異である。一方で、そんなマコトの存在がギャングボーイズやヘルス嬢、ヤクザの下っ端構成員よりも一般人に近いという点で、読者を物語内に誘いこむ呼び水としての役目をじゅうぶんに果たしているといえる。
新宿や六本木といった街とはまるで違う池袋という街のごみごみした様子、年齢層の低さ、成長過程の街といった雰囲気。そんなものが、リアルに描かれている。現在シリーズ化されて多くの本が出ているが、必ずしも順に読む必要もないように思う。手にしたところから、どうぞ。
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