世の中にはこんなひどい話があるんだ。じゃあやっぱりサスは、あたしをおいはらうためだけにこの未亡人の街につれてきたんだ。あたしは知らない街でひとりぼっち。お金は少ししかないし、友だちもいない。
「家なき鳥」グロリア・ウィーラン(代田亜香子訳) 白水Uブックス
「あたし」、コリーは13歳のとき、見も知らぬ相手と結婚することになった。代書の仕事をしているバープ(お父さん)の仕事だけでは、マー(お母さん)と兄さんたちに食べさせるのがやっとだからだ。コリーは結婚式用のサリーに刺繍をしながら、結婚相手についてあれこれと想像をめぐらせた。でも、コリーの結婚相手は聞いていたのより年下の病弱な男の子だったし、コリーの持参金で彼を病が癒えるというガンジス川に連れていくことだけが望みだったらしい。それでも、持前の明るさでなんとか喜びを見つけ出そうとするコリーだが、ガンジスに連れて行ったかいもなく、夫が亡くなり、コリーはすぐに未亡人になってしまう……
貧しい家に生まれ、望まれぬ結婚をし、虐げられ、それでも希望を失わずに前向きに生きる少女コリー。とはいえ、これはいたいけな少女がじっと耐え忍ぶといったたぐいの話ではない。現代っ子らしく、たとえどん底に落ちたと思われるときでも、どこかさばさばしているコリーの語り口にはユーモアさえ感じられるし、なんというか……たくましいのだ。
どんなときでも希望を失わずにいれば、きっと道はひらけてくる。勇気と希望の見える一作。全米図書賞受賞。
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