「いや、それは俺の知ったことじゃ……」
「わたし、気になります」
「氷菓」 米澤穂信 角川文庫
神山高校一年、入学したばかりの「俺」、折木奉太郎は面倒なことには興味を持たず、ひたすら省エネ生活を送ろうと心掛けて生活することを信条にしている……はずだったのだが。決して断ることなどできない姉からの(しかもベナレスからの)手紙で廃部寸前の古典部に入部することになってしまった奉太郎の身辺に起るさまざまなミステリ。いつのまにか密室になってしまった教室や、毎週必ず借り出される本、そして『氷菓』という題名の古典部の文集に秘められた謎。同級生で腐れ縁の福部里志や伊原摩耶花、そしてお嬢様千反田えるといった古典部の仲間にもちかけられた謎は、奉太郎にとっては取り組むことさえ面倒なものなのだったが、千反田の「わたし、気になります」というひとことには勝てるはずもなく……
面倒だとはいいながらも、いつのまにか巻き込まれて謎解きをしてしまう奉太郎だが、パターンとしてはアシモフの「黒後家蜘蛛の会」に近い。里志や摩耶花、千反田えるがいろいろな推理を展開するが、それはそれぞれ順に否定されていく。そして最後に残ったものが真実である……と。
謎はいくつかあるが、物語としては『氷菓』の謎を解くことで長編の形になっている。重い話ではないので、気楽に読める学園もののミステリが好きな人にはオススメ。
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