「暗闇でなにかを求めて手探りするか、それともあかりのなかで楽に見つけられると楽観するか。選ばせると、人は百人中、九十九人まではあかりを選ぶ」
「百番目の男」ジャック・カーリイ(三角和代訳) 文春文庫
心理学修士課程で囚人たちにインタビューしていたとき、そこで知り合った刑事ハリーと知りあい、ハリーの勧めもあって警官となったカーソン・ライダー。連続放火殺人事件(エイドリアン事件)では犯人の心理状態をぴたりといいあて、とんとん拍子に私服刑事への道を歩んでいるかに見えたライダーだが、彼の過去には暗い秘密があった。
公園にこれ見よがしに捨てられていたかに見える頭部を切断された死体から始まった連続殺人。折りしも警察上層部では本部長の椅子をめぐってのパワーゲームが進行中。昇進を狙う警部スクウィルにとって、ライダーたちの活躍は目の敵にしかすぎない。周囲の無理解、新しく知り合った友人の抱える問題、そして自分の秘密。危ういバランスの中で、それでもライダーは犯人を追い詰めるためにある決心をする――
ライダーの抱える「秘密」というものが大きいため、それと関連したエイドリアン事件まで伏せられてしまっている。途中まで、「これって第2作目?」と、なんだかもどかしいような気分になってしまうが、そこは作者の引っ張りどころ、というものなのだろう。
この作品のおもしろさは、とにかく個性豊かな登場人物たち。なかでも、若さに任せて突っ走りがちで、しかも「秘密」のために屈折したところもあるライダー(彼こそが「暗闇の中で手探りする」百番目の男)と、経験豊かでユーモアもあり度量の広いハリーの「相棒」ぶりは必見。厭味な上司だとか有能な女性検死局長などもそれぞれにいきいきと描かれていて飽きさせない。個人的にはエピローグがすごい!! と思っているのだが、これはネタばれになるので書けない……。オススメです。読んでください。
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