親愛なる、そして不運なるわが後継者へ
きみが誰なのかは知らないが、私がここに書き記す話を読んでいるかと思うと、残念でならない。
「ヒストリアン」 エリザベス・コストヴァ(高瀬素子訳) 日本放送出版協会
1972年、16歳の「私」は父の書斎で、一冊の古い本と黄ばんだ紙の束を見つけた。他人の私信を勝手に読んではいけないと思いつつも開いてしまったその手紙は、「親愛なる、そして不運なるわが後継者へ」という宛名で始まっていた。そして、本は――真中あたりに竜の挿絵が入っているだけで、あとは白紙だった。ある日、機会を見つけてその本と手紙をのぞきみてしまったことを告白した私に、父は苦しげに話し始めた。その本のことを。そして、その手紙のことを。
それは若き大学院生のポールが、指導教官のロッシの失踪を機に踏み入れた、恐怖に彩られた探索の物語。竜の挿絵をある本を手にした者が否応なく巻き込まれていったのは、歴史の闇に葬られた一人の男を追い求めることだった。
……ネタばれになるのでどこまで書いていのかわかりません。
実はわたし、この本に関してはまったく予備知識ゼロの状態で読んだのだ。もしかするとどこかで書評を読んだかもしれないが、さっぱり忘れきっていた。ということで、扉裏にある引用が妙な本から引用されてるなあ……と思ったくらいで、まさか中身もそういうことだとは思わなかったのである。ということで、これからこの本を読む人も、ぜひ予備知識ゼロで臨んでもらいたい。
昔話の途中で失踪してしまった父ポールを追う娘と、残された手紙の中でロッシを追う若き父ポール。手紙を読むことで、父と母の出会いを知り、ふたりの力強くも悲劇的な探索の後をたどる娘。物語は複雑に絡みあっており、とりあえず上下二冊はあっというまに読めることだろう。この本に関しては、読んだ人と語りたい。
ということで、既読者(もしくはネタバレでも別にかまわない未読者の方)は「本音で語るヒストリアン」へどうぞ。
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