「知りたいのです」
「知識と引き替えに永遠の地獄に堕ちてもか」
「忘却の船に流れは光」田中啓文 早川書房
厳格な身分制度によって支配される「世界」で、ブルーは聖職者として生まれた。悪魔来襲、大再厄を経て、世界はより一層強固な掟に縛られているのだ。しかし、初めて参加した悪魔崇拝者たちの摘発後、ブルーの信念は揺らぎ始めてしまう。修学者のヘーゲル、保育者のマリア。これまで知らなかったことどもが徐々に明らかにされる中、ブルーが知った「世界」の真の姿とは。
最初にお断りしておきますが、どなたにもススメられるような本ではありません。個人的にはわたしもあまり好きではない、汚くグロテスクな描写の連続。はっきりいって、気持ち悪い。ホラー小説が嫌いなわけではないわたしは、大抵の血の出る描写とか痛い感じのものとかは大丈夫なのだが、この小説に限っては「きたない」。食事の前後には読めないと思う。
ただし、聖職者として自らを律していたブルーが堕落しつつも世界の謎に迫っていき、真実が明かされたとき、そのあまりに壮大なネタに「おおー」とうなってしまったのであります。よくある話の変則版といえばそうかもしれませんが、最後の最後のオチまで考えると、こういう話はいままでなかったな、と。そのアイデアがすごい。
ま、全体のアイデアはすごいけど、気持ち悪くて、ちょっと再読してもおかしいと感じてしまう、根本に関わる(つまりネタばれになってしまうのでいえない)ところなどもあるので……SFの好きな人できたない描写も大丈夫な人。読んでみて下さい。で、最後のアレってやっぱりちょっとおかしいよね? というネタばれ確認をしたいと思います。よろしく。
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