「花言葉はひとつきりなのよ、ヴィクトリア」
          「花言葉をさがして」ヴァネッサ・ディヴフェンバー (金原瑞人・西田佳子訳) ポプラ社


 生まれてすぐに母親に捨てられ、いくつもの里親を転々とし、十八歳になったいま、グループホームを出て独立することになったヴィクトリア。無口で無愛想で先のことなどまるで考えていない彼女は、ホームを出た後、あっというまにホームレスとなってしまう。そこでようやく真剣に生き方を考えたヴィクトリアは、花と花言葉に詳しいという唯一の特技を生かそうと、花屋ブルームに勤めることに成功する。そして花に込めたメッセージが人々の生活を変え、ヴィクトリアは少しずつみなに頼りにされるようになっていくが……
 物語は現在のヴィクトリアと同時に、九歳の彼女の姿を描いていく。これが最後の里親だといわれたエリザベスのもとに引き取られたヴィクトリアは、当初かたくなな姿勢を崩さないが、花を愛し、厳しいながらも愛情たっぷりに扱ってくれるエリザベスに信頼を寄せるようになる。互いに愛情を寄せ、親子となることを望むふたり。
 エリザベスとの日々はしあわせだが、現在のヴィクトリアはエリザベスとは離れ、暗い秘密を抱えて生きている。どうしてこんなことになってしまったのか? エリザベスとのあいだに、いったいなにが起きたのか。読み手は現在の部分にひそむ謎に徐々にひきよせられていくことだろう。
 投げやりで無愛想でとげとげしいヴィクトリアは、みずからを「アザミ(花言葉:人間嫌い)」とするほどに可愛げがない。それでもいつのまにかそんな主人公にひきよせられてゆくのは、おそらくヴィクトリアのまわりにいる人々が彼女を愛し、彼女のこころをひらこうとしているからなのだと思う。深い愛情と信頼、ゆるしの物語。オススメ。



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