「ちゃんとわかっていただけていないようだ。墓石を読むとは言わなかったでしょう。墓を読むと言ったんです」
「墓読み」(「海を失った男」所収)シオドア・スタージョン(若島正編) 晶文社
「俺」は死んだ妻のために墓を立てたが、墓碑銘を刻むつもりはなかった。家から八百マイル離れた場所で、どこかの男とスポーツカーに乗っていた妻。身につけていたのはお洒落なバスローブ一つきり。いったいどうして、なぜそんなことに? 妻のしたことがまったく理解できない「俺」だが、それは妻が生きているときからもそうだった。何を考え、何をいいたかったのかなんて、まるでわからなかったのだ。そんな彼が墓地で出会ったのは、墓を読むことのできる男。そして俺は墓読みのレッスンを受け始める。盛り土の描く曲線や、その上に育つ植物、芝や雑草や苔。さまざまなものから、土の下に眠る人の一生を読むのだ。そしてようやく、妻の墓を読むレベルにまで到達した俺が知った"真実"とは。
短編集。
スタージョンの短編集はどれもレベルが高いので、簡潔に「オススメ」として終わらせたい誘惑にかられる。他の作品でも感じられることだが、これもまた、自分とは違った存在をいかに理解するのか、理解できるのか、というようなことがテーマとなった作品が多く収められているのだと思う。自分と違う存在を愛せるのか。他人と違う自分を愛せるのか。スタージョンが与えてくれる解は、ときにさびしく、ときにあたたかい。
個人的には「三の法則」に出てくるパワフルでおせっかいなおばあちゃんたちがオススメ。
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