「……それで、あの、……」
 僕はのけぞった。「……僕も残るのか。つまり」
             
   「理由あって冬に出る」似鳥鶏  創元推理文庫

 「僕」、葉山の通う某市立高校には、芸術棟と呼ばれる建物があった。吹奏楽部に美術部、演劇部などが練習場として使用しているそこは、騒々しく小汚く奇妙で暗く、ほぼ放置状態で、本来あってはならないことだが鍵の管理も生徒任せにしている杜撰な部が多い……という状態。とはいえ、それなりに平和で過ごしやすくもあり、三階北側にある美術部のアトリエでひとり創作活動にいそしんでいたわけだが、ある日、同級生で吹奏楽部の秋野から、妙な協力を依頼される。なんと、この芸術棟に幽霊が出るという噂があり、部員が練習に来なくなってしまったというのだ。幽霊の噂を否定するために芸術棟で一夜を過ごすという部長の高島と秋野につきあえと頼まれた葉山。なぜかそこに演劇部の三野まで加わって、幽霊なんているはずがない……と芸術棟にむかったが、なんとそこには幽霊が! ふうっと消えた幽霊は、本物か。噂どおり、行方不明になった吹奏楽部の立花先輩のものなのか? 幽霊出現の噂を聞きつけた物識りの文芸部長、伊神先輩にこき使われて、葉山は地味に幽霊騒ぎの真相を確かめるべく、聞き込みにまわる。そこで明らかになった真相とは? 
 非常識な先輩にこき使われ、お調子者の同級生をなだめつつ、そしてちょっぴり恋の予感なども感じさせながら進む物語はユーモアたっぷりで読みやすい。ここはなんといっても、ファミレスで注文もせずに居座る伊神先輩につきるでしょう!(笑)。
 実は創元推理文庫は、日本人作家の本にも英文タイトルをつけている。今回のこの本につけられた英文タイトルは「HIGHSCHOOL GHOST BUSTERS」。これ以上、いうことはなにもない、どんぴしゃの英文タイトルだと思う(なお、ほかの本も気になったら見てみてください。なかなか洒落た英文タイトルがつけられていて、感動することがあります)。



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