「おまえは帝国を守れ。国を守り、人を守り、レンカを高く潔い国家に育て上げろ。この国はまだ未熟だ。一歩間違えば腐り果てるか、食い尽くされる。若いおまえが、なんとしてもそれを防ぐのだ!」
「復活の地」 小川一水 早川書房
王紀440年、5月44日。惑星統一を果たし、いままさに星間列強諸国に対峙しようとしていたレンカ帝国の首都トレンカを激しい地震が襲った。死者の数50万人以上。折りしも議会中のことであり、倒壊した国会議事堂の中で国会の中枢機能は壊滅、高皇までもが行方不明となっている。……帝都全滅。その状況の中、植民地総督府の官僚であったセイオ・ランカベリーが、当初は、生存者の中でもっとも位の高い官僚として、ついで帝国復興院の総裁として采配を振るう。だが、有能ではあるが強引なセイオの政策は、彼を目の敵にするサイテン首相率いる政府のみならず、彼を任命した摂政スミル、そして彼が救うべき市民からも反発を受けてしまう。セイオを突き動かすものはなんなのか。内親王から摂政となったスミルは、彼から向けられる憎しみにも似た冷たさにとまどい、反発しながらも、彼の内面に興味を抱き、惹かれてゆく。
タイトルどおり「復活」を描いた作品。
建物が崩れ、人が死に、けれど壊れたものはそれだけではなく組織そのものでもある。誰かがリーダーシップをとり、誰かがやらねば誰も動けない、という状況の中で、セイオがとった行動は、確かに間違ってはいない。実際、彼しかできないし、彼がしなければ何も変わらないからだ。だが一方で、セイオたち復興院の動きとは別に、篤志人という人々の姿も描かれている。「救う」のではなく「助ける」ことを目的にした人々。ゴールは同じかもしれないけれど、セイオと篤志人とではやり方が違う。その違いがどこから生まれたのか……そしてセイオは変われるのか?
全三巻。裏表紙のあらすじをよめばわかることなので書いてしまうが、ようやく復興の兆しが見え始めたというのに、ふたたびの二次災害の予告が。復興院総裁の地位を奪われたセイオは、この予知された災害にどう立ち向かうのか? 全三巻なんてあっという間です。絶対のオススメ。
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