「お好みの嘘を、お好きなだけお取りください。そして、売り切れたら、戻って来て、どんどん取ってください。ここには、いつでも、みなさんのための嘘があるのです!」
                   
「ほどほどにちっちゃい男の子とファクトトラッカーの秘密」 ジェイソン・カーター・イートン(小林美幸訳) 河出書房新社

 トラアーカーファクス町の丘の上には工場(ファクトリー)があって、そこにはファクトトラッカーが住んでいた。ファクトトラッカーは世界中のありとあらゆる真実(ファクト)を発見して集めて、それを追跡する人(トラッカー)だ。トラアーカーファクスの人たちは、ファクトトラッカーが発見した真実を購入希望者に売ることで生計を立てている。
 そして、そんなトラアーカーファクス町に、ほどほどにちっちゃい男の子がひとりぼっちでさみしく暮らしていた。ほどほどにちっちゃい男の子が生まれたとき、とんでもなく恐ろしいことがおきて、ほどほどにちっちゃい男の子の真実と両親はごろごろ丘を転がって行ってしまい、二度と戻って来なかったのだ。ほどほどにちっちゃい男の子は、トラアーカーファクス町の人たちに面倒を見てもらいながら、自分や両親に関する真実を見つけようとしていた。ファクトラッカーも、ほどほどにちっちゃい男の子にときどき両親の真実を送りつけては、彼をなぐさめてくれた。こうして、ほどほどにちっちゃい男の子とファクトトラッカー、そしてトラアーカーファクス町の人たちは、それなりに幸福に暮らしていたのだが……ある日、とんでもないことがきっかけで、ファクトトラッカーの工場が爆発。その後にやってきたイミテーションのきらびやかな口先に騙されて、トラアーカーファクス町の人たちは、真実のかわりに嘘を売るようになってしまう。
 人生(LIFE)なんて、真中にFが入った嘘(LIE)にすぎない――
 凝りに凝った章の見出しといい、ふざけまくった設定といい、くだらないけど魅力的。日本語だといまいちよくわからないが、ひねりまくっただじゃれがたくさんあって、実は英語で読むと、ストーリーとは関係なく、同じ頭文字の単語だけでできている文章なども交じっているらしい(いったいなんのために? って、そりゃ作者が楽しむためなんだろうなあ……)。著者紹介もふざけまくっていて、どこまでが真実でどこからが嘘なのやら。
 ロアルド・ダールの再来と絶賛され、MGMのデビッド・シルヴァーマン監督で実写映画化が決定。日本語がおもしろかったら、英語でも。



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