「大丈夫ですか?」
「うん。殴られたり蹴られたりするのには、わりと慣れてるんです」
普段はどんな仕事をしているのだろう。ほんとうにコイツは中央省庁の官僚なのだろうか。まるで零細ヤクザの鉄砲玉みたいなメンタリティに見える。
「チーム・バチスタの栄光」海堂尊 宝島社
桜宮市にある東城大学医学部付属病院では、アメリカ帰りの心臓専門外科医、桐生恭一を中心に据えた"チーム・バチスタ"とも"グロリアス・セブン"とも呼ばれる外科チームが活躍していた。しかし、心臓移植に代わる高リスクのバチスタ手術を100%の成功率で成し遂げてきたチーム・バチスタだが、ここにきて原因不明の術中死が連続。その原因はどこにあるのか。偶然か、医療事故か、それとも殺人か? 病院長高階の特命を受けてチーム・バチスタの調査を担当することになったのは、通称愚痴外来、患者さんの愚痴やらよもやま話やらを聞く不定愁訴外来の担当、田口。外科オンチで出世欲に欠け、院内の勢力図にも興味のない自分が何ゆえに選ばれてしまったのか……不承不承腰をあげた田口はハイリスク・ローリターンの貧乏くじに頭を抱えながらも、チーム・バチスタの面々へ聞きとり調査を始める。だが、調査の最中にも術死は発生してしまい、臨時に召集されたリスクマネジメント委員会を前に田口が出会ったのは、高階病院長のもう一つの切り札、厚生労働省のロジカル・モンスター、火喰い鳥の異名を持つ白鳥だった。そしてここに、他人の話にひたすら耳を傾ける田口の聞きとり調査と、相手を怒らせること平気で口にすることで真実を掘りあてようとしていく白鳥の手法があわさったことで、ようやく真実が浮き彫りになってくる。
物語は田口のパッシヴ・フェーズによる聞き取りの前半と、白鳥(と同席の田口)によるアクティヴ・フェーズによる聞き取りによる後半とで構成される。やや繰り返しに感じられはするものの、とにかく田口、白鳥を中心とした強烈なキャラクターが楽しく、リアルな病院内部の様子も、それだけで読ませる。
それにしても実際に白鳥のような人がいたら、いやだと思う……反面、けっこう好きかも。とも思ってしまう(笑)。
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