―――おじ様、私は幸福になるほんとうの秘訣を発見しました。それは現在に生きること
です、いつまでも過去のことを悔やんだり、未来を思いわずらったりしていないで、今の
この瞬間から最大限度の喜びを捜し出すことです。
「あしながおじさん」 ウェブスター(松本恵子訳) 新潮文庫
ジョン・グリア孤児院で暮らす17歳の孤児、ジルーシャ・アボットはその作文の才能が認められ、大学に行けることになる。彼女の大学費用を出してくれたのは匿名の評議員。ジルーシャは背の高い後ろ姿しか見たことのない彼のことを愛情を込めて「あしながおじさん」と呼び、彼に楽しい学校生活の毎日を書き綴って送る……この本は、そのジルーシャ(ジュディ)の書簡集だ。
じつは小学生のころ、この本を読んでなんてつまらないんだろうと思った。大学生になって読み直して、あまりの面白さに目からうろこ。「続・あしながおじさん」も含めて、大好きな本になった。「読むのに適した時期」というものがあるのかもしれない。
孤児だったジュディにとって大学の生活は毎日が新しいものばかり、明るく楽しく過ごしているように見える。でも、あるときジュディは書く。
「私は一人ぼっちなのでございます。実際に――誰も後ろ楯なく壁を背にして世の中と闘っているのでございます。それを考えると息がつまりそうな気がいたします」
けれどジュディはそんな考えを心の中からつまみ出して、今この瞬間の最大限の喜びを見つけ出していくのだ。ジュディの前向きな生き方は、悲しいとき、落込んでいるとき、後ろ向きな考えばかりになってしまいそうなとき……ふたたび立ち上がるための勇気とすがすがしい感動を与えてくれる。
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