「言っとくけど、ただの探偵じゃないぜ。大英帝国一の名探偵なんだからな」
「キューピッドの涙盗難事件」 真瀬もと 理論社
ロンドンに住むリアム・マッギャンは12歳。酒飲みの父親とふたり暮らしで、決して豊かではないけれど、ベイカー街に住む名探偵、シャーロック・ホームズと知り合ってからは得意の掏摸もやめ、いまはベイカー・ストリート・イレギュラーズのメンバーとしてホームズのために情報を集めたりお手伝いをしたりしているところだ。といっても、常識人のワトスン先生はアメリカに行ってしまい、名探偵ではあるけれど日常生活では限りなく変人に近いホームズがリアムたちのことを気にかけているとも思えないが……。
そんなある日、ロンドンをにぎわす黒薔薇の賊が次の獲物を狙っているという話を聞きつけたリアムは、ホームズの手助けになるよう、自分なりの聞き込みを始めようとする。だが、リアムの隣の部屋に住む霊感を持つ少女イヴには不吉な予言をされるし、探りに行った屋敷の外では血まみれの短剣を拾ったのにそれを奪われてしまうし、リアムの探偵業はなかなか思うようにはいかない。ようやく重い腰をあげたホームズは何か確信があるようだが、それを教えてはくれないし……ホームズは、そしてリアムは、キューピッドの涙と呼ばれるオパールを取り戻すことはできるのか?
ベイカー・ストリート・イレギュラーズ(ベイカー街少年探偵団)を主役に据えた物語。リアムの他にも、さまざまに個性的な面々がいるのだが、物語の中ではちらちらと登場するだけ。この話はもちろんこれだけで読み切りだと思っても大丈夫だが、一応シリーズになっているようなので、今後他のメンバーが活躍してくれるのも楽しみだ。
ホームズ正史とでもいうべき、コナン・ドイル作品に登場する面々もホームズ、レストレイド警部をはじめ何人か登場し、楽しめる作品となっている。
オススメ本リストへ