力士と災害の問題を政府はどのように考えるのか。相撲は日本が世界に誇る文化である。だからこそ、「力士」という爆弾を抱えたわが国は、その対策をそろそろ世界に示す時期が来ている。
「牛への道」 宮沢章夫 新潮文庫
知人の勤める某会社で、上司が若い女の子を集めて本を配ったのだという。「りっぱな犬になる方法」(記憶は定かでないが、そのようなもの)。実際に見せてもらったが、イラストつきで可愛らしく、そう悪い本ではない(20歳を越えた部下に配る本か? とは思うが)。しかし、
「犬ですよ、犬! なんであたしがあいつのためにイヌにならなきゃなんないのよ、きーっ」
と、おそらく上司の意図はまったく違うところにあったのかもしれないが、彼の日ごろの不徳のいたすところ、女の子たちからは完全に総スカをくらっているそうだ。
で……「イヌに対抗できるのは何かありませんかね、何か!」と問われ、とっさに、「牛とかどう?」といってしまった。
「牛!? なんで牛なんですかっ」
「いや、まあ、イヌよりは響きがいいんじゃないの。サツのイヌとかっていうけど、サツの牛とはいわないし、なんとなくのんびりしたいい雰囲気だし……『りっぱ』ではないけど、牛になるっていうか、『牛への道』って本もあるし」
「それはなんですか、それを読むと牛になれるっていうんですか、どういう牛ですか」
「いや、そういうわけでもないんだけど……」
そういう本ではないんだけど。ほとんどが見開き一ページで終わる、エッセイともなんともつかぬ文章の数々。とにかく「まえがき」だけを読んでもらって、それに笑えたら先に進もう。自販機におけるスポーツドリンク脱力事件。わたしはここで大笑いしてしまった。他にもいろんなことに対してくだらなくもない考察を凝らしていて、笑える。たとえば、「力士の安全性」について。そして、妙に説得力のあるその想像。
「たとえば、ホテル火災で、煙にまかれた力士が三人、通路に倒れてなどいたらこれはことだ。こんなにでかい障害物もあったものではない」
本当です。災害に際して力士がどう対処するか。国技なんだから、みんなで真剣に考えるべきかもしれません(笑)。
(注。いや、個人的には犬は好きですよ、もちろん、牛よりはよほど……)
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