「どうか本当のサディーを知ってください。あの子は、ただの小さな未完成の人間じゃないんです。わたしが保証します、みなさんはあの子を愛さずにはいられなくなるわ」
               
「クリスマスに少女は還る」 キャロル・オコンネル(務台夏子訳) 創元推理文庫

 クリスマスに近いある日、ふたりの少女が姿を消した。家出なのか、誘拐なのか。州警察に現れた法心理学者は、これは十五年前から続いているサディストの小児性愛者の仕業だという。十五年前―――それは刑事ルージュの双子の妹スーザンが殺された事件だった。犯人の神父は既に刑務所にいるはず。神父は冤罪なのか? 十五年前、スーザンとともに死んだはずのなにもかもが動き出す。ルージュははたしてふたりの少女を、そして十五年前に失ってしまった自分自身を救うことができるのか。
 法心理学者はいう。犯人の狙いは常にリトル・プリンセス。大富豪の、美しい少女である、と。もうひとりはリトル・プリンセスをおびき出すためのおとり、プリンセスの親友であることが多い……が、おとりはおそらくつかまって一時間内に殺されているだろう。プリンセスを呼び出してしまえば、彼女に用はないのだから、と。今回、誘拐されたのは州副知事の娘で美しい10歳の少女グウェンと、その親友でホラーマニアのサディー。だからサディーはもう死んでいるだろう。警察は、残されたグウェンを救うことを考えよう、と。
 けれどそのとき、不思議な家の不思議な地下室で、グウェンを助けていたのはサディーだった。
 サディー・グリーン。ホラー映画が大好きで、悪趣味なことで他人を驚かすことが大好きな「小さな人」。なにせサディーの得意技はフォークで自分の目玉を突き刺し、血まみれのそれを取り出してから口の中でくちゃくちゃ噛む……そんな芸当なのだ。けれど、サディーの母親ベッカが繰り返していうように、わたしたちはサディーを愛さずにはいられないだろう。顔いっぱいに広がった笑みで親友を慰めるサディー。足に怪我をし、自棄になっている親友を抱きしめて「あたしにあんたを置いていけるわけがないでしょう?」そういってくれるサディー。
 この物語は少女ふたりの知恵と勇気、そして友情の物語でもある。だからこそ、この結末には衝撃と、そして深い深い感動をおぼえずにはいられない。


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