「だけどお金の問題じゃないんだ。希望を残すためにやりたいんだよ。おれたちはぺしゃんこにされない! いいようにされてたまるもんかってとこを見せてやりたいんだ」
                   
「チョコレート・アンダーグラウンド」 アレックス・シアラー(金原瑞人訳) 求龍堂

 まさかこんなことにはなると思っていなかったのだ。「健全健康党」に投票した人たちは、世界が住みやすくなると思っていたし、そもそも投票に行かなかった人たちは、どの党に投票したところでどのみち何も変わらないと思っていた。でも、それは大きな間違いだった。
 「健全健康党」により有害だと決めつけられたのはチョコレートや砂糖を使った甘いお菓子。チョコレートを持っているだけで捕まって「再教育」のための訓練所に送られてしまう。だけどこんな状況に甘んじていていいものか? 否、決して! チョコレートが大好きなハントリーとスマッジャーのふたりは、古本屋で手に入れたチョコレートの作り方を参考に、自分たちの力でチョコレートを作り、それを闇で売り始める。しかし密売人としての自分に酔ってしまったスマッジャーは、ハントリーの戒めも聞かずに油断し、チョコレート捜査官の目を引くような行為に出てしまう……
 チョコレートの密売というあり得ない状況の中で闘う少年たちの姿を描いた物語。しかし、禁止されたものがチョコレートでなかったなら……? 自分ひとりで、あるいは自分と友人たちだけでは世界なんて変えられない。そんな気持ちで負けてしまうのはいやだ、とがんばる二人の少年の力強さと反骨精神。そんな少年たちに大人たちも動かされてゆく。
 個人的には、チョコレートじゃなかったらなあ……もっと感情移入できたかも。




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