ああ、それにしても、どうしてこんな不可能な仕事をひきうけてしまったのか! ホーカは断じて人間のミニチュアではありません。かれらを人間にしようとする小生の試みはすべて目の前で粉砕されてしまいました。
「地球人のお荷物」ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン(稲葉明雄・伊藤典夫訳) 早川書房
星間調査部隊少尉アレックスが不時着したのは、太陽系から500光年離れた惑星トーカ。地球とうりふたつといってよい環境に住むのは、テディベアそっくりな外見(ただし身長は1メートル)のホーカ。類稀なる学習能力と、天真爛漫な好奇心、夢中になったものを真剣に、どこまでが「ごっこ遊び」かの区別なく信じきって真似する能力に長けたホーカは、そのとき、地球19世紀の北アメリカに夢中になっていた。ということで、アレックスはあれよあれよというまに、陽気な悪夢といった状況……ホーカいうところのインディアン(惑星トーカのもう一種類の知性ある生物、スリッシー族)との闘い、西部劇そのものの世界に巻き込まれていく。
爆笑のユーモア・シリーズ。
ホーカが夢中になるのはオペラだったり、宇宙パトロールものだったり、シャーロック・ホームズだったりする。テディベアそっくりな彼らが、ごっこ遊びに夢中になる姿を想像すると非常に愛らしいが、自分たちが宇宙パトロール隊の一員だと(あるいは、ホームズ、あるいはフランス外人部隊の一員、あるいは海賊)信じきっているゆえに、アレックスの必死の説得も自分たちの都合のいいように解釈して受け取って知らんぷり、というあたりが厄介である。物語は天真爛漫なホーカに振りまわされて苦労し、しかし、いつしか自分もホーカ社会にどっぷりつかっていくアレックスの姿を、あいだに挿入される報告文で垣間見せつつ進んでいく。
テディベアの好きな人、ぬいぐるみの好きな人、わがままだけど愛らしい弟や妹、いうことをきかないけど可愛いペット……というものが好きな人には絶対のオススメ。苦労もまたよろこび(?)。
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