「このままでは世界は滅びる」
          上遠野浩平「ブギーポップ・シリーズ」  角川書店(電撃文庫)

 女の子たちだけにひそかに伝わる噂……人が最も美しい瞬間に殺してくれるという死神、ブギーポップ。彼の正体こそ、世界の敵と戦うコスプレヒーローだった!!(笑)
 コスプレ(それがどんなものかは読んでのお楽しみ)しているブギーポップの他に、正義の味方の霧間凪や世界の敵、はては人造人間たちなどなど、強烈な魅力を持つキャラクターが次々に登場。死力の限りを尽くして闘う! バッタ切りしてしまえばそうなのだが、じっくり読んでみるとちょっと違う。この中には友情や死や人の存在そのものについて考えさせられるようなことも描かれている。そしてまた、だれがどんな理由で「世界の敵」になってしまうのか、その答えも意外に哀しい。死や恐怖にとりつかれた少女、過去をやり直すことを願った少年。ひとならばだれもが世界の敵になる可能性を持っている。そして……だからこそ闘うヒーロー、ブギーポップの存在は哀しい。既存の正義のヒーローがもっていた明るさや強引さ、過剰なまでの自信、そういうものがブギーポップからは感じられないのはおそらくそのせいなのだろう。
 とはいえ、そんなに肩に力を入れて読むこともない。単純にヒーローものとして読んでもいいだろう。凪の父親である霧間誠一の文章がところどころに挿入されていて、それだけを追って読んでも楽しいかもしれない。他の巻の中心人物たちが、別の巻では喫茶店の別の席にいるほんのちょっとした脇役として登場する、というような遊びもある。それを探すのも一興だ。なかなかに工夫の凝らされたシリーズなのである。ぜひ一度、手にとってみてほしい。



オススメ本リストへ