知りたくないことに耳を貸さない人間に話が通じないということは、日常でよく目にすることです。
「バカの壁」 養老孟司 新潮新書
そこで、脳内の一次方程式、というのが出てくる。
「では、五感から入力して運動系から出力する間、脳は何をしているか。入力された情報を脳の中で回して動かしているわけです。
この入力をx、出力をyとします。すると、y=axという一次方程式のモデルが考えられます。何らかの入力情報xに、脳の中でaという係数をかけて出てきた結果、反応がyというモデルです」
たいていの場合、aが何もない、ということはありえないのであるが、非常に特殊なケースとしてゼロと無限大というのがある、と話は続く。aがゼロであれば、なにを入力しても出力はない。出力がないということは行動に出ない。これが、どんなことがあったとしても自分の行動や考え方を変えない人のありかたである。おやじから説教されて「うんうん」と頷いていても、また次の日に同じことを繰り返す子どもは、「おやじの怒った顔」は現実だけど、「おやじの説教」は現実ではない。だから、親父の顔を見れば逃げたり避けたりするけれど、説教に関してはa=ゼロなので、まるで行動に影響はない。
無限大の場合は宗教になっていくのだが……話は他にも脳のあり方や、個性についての独特の意見など多岐にわたり、コウモリと人間の脳の話だけでも楽しいのだが……この一次方程式につきました、ワタクシ!
とはいえ、これは恐ろしい本であって、自分にとってどのあたりがゼロだったのか、こうやってオススメ文を書いているあたりでばれてしまうのかもしれない…細かい書評する人はつらいだろうな(笑)、と思ってしまう。ともあれ、さすがベストセラー。おもしろい。
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