「ですが、部外者の私が言うのも厚かましいですが、あなたの仕事は部下に愛されることではない。むしろ部下を叱咤し、追い込み、数字を積み上げるように厳しく指導することがあなたの仕事のはずです」
「借金取りの王子:君たちに明日はない2」垣根涼介 新潮社
今回、真介が担当するのは『フレンド(株)』のリストラ代行。押しも押されぬ消費者金融業界の最大手。こんな会社がなぜ、と思いつつ向かった面接先で、真介はさらに、こんな会社になぜ、というように、姿かたちも性格も育ちもよさそうな男、三浦を面接することになる。最近の営業成績こそぱっとしないものの、部下に慕われ、過去の営業成績を見れば、能力的にも問題ない。こんな会社にいるよりも、外の会社に行ったほうがいいのでは……? ついつい職分を外れて本音を語ってしまいそうになる自分を抑える真介だが、一方の三浦宏明には、この会社を辞めたくない、辞められない理由があった。秘めた純愛の行きつく先には、いったい何があるのか――
『君たちに明日はない』続編。これも連作短編集になっている。とはいえ、今回はむしろ前回以上に、能力のある人たちが出てきているように思う。営業成績二億の実績を持ちながら、「誰かが辞めなければならないのなら」といって自ら辞職の意思を述べるデパガ、仕事はできるが女性とうまくやっていけないがために冷遇されている生命保険会社の社員など、確かに、彼らならきっと外に出て行ってもうまくやっていけるだろう、と思わせるのだ。
真介にリストラを進められた彼らは、ときには会社を出て行き、ときには会社に残って、これからも生活を続けていく。だが、そんな彼らに「明日」はある。どんな境遇になっても、きっとたくましく、力強く生きていくに違いない。タイトルは「明日はない」になっているけれど、前作以上に前向きで明るい、いい作品ばかり。前作よりもこちらのほうが、もっとオススメ。
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