ウェニーへ。
 ぼくも死んだんだ。二人がトラックにひかれたときじゃなくて、そのすぐあと、病院で。
          
   「あの空をおぼえてる」 ジャネット・リー・ケアリー(浅尾敦則訳)  ポプラ社

 町の木工店に出かけた「ぼく」、ウィルとウェニーは、道路を渡ろうとしていたとき、トラックにはねられてしまった。そして、暗いトンネルを抜けた先にあるきれいな空で、ウェニーは光の人と一緒に楽しそうに飛んで行ってしまった。でも、ウィルは、パパやママのことを思い出して、戻らなきゃ、と思って、自分の体に戻ってきた。でも、ウェニーがいない生活はとてもさびしいし、パパもママも、以前とはぜんぜん変わってしまった。さわがしくて楽しいウェニーがいないと、家の中はしんとしている。ウェニーがしたおもしろいことを、いまウィルがやっても、誰も笑ってはくれない。このままじゃいけない、家族に笑顔を取り戻さなきゃ、と思うのに、その思いは空回りするばかり。そんな日々のことを、ウィルはウェニーへの手紙として書き綴る。
 おちゃめで元気いっぱいの可愛い妹を亡くしてしまった兄がつづる、天国への手紙。悲しみばかりではなく、前向きに進もうとする勇気や希望、家族への温かさも記されていて、だからこそ、胸にぐっとくるものがある。ウィルの目から見た、両親の悲しみの深さも、子どもの視線で描かれているからこそ、よけいに伝わってくるような気がする。
 悲しいだけの話ではないし、泣かせるだけの話でもない。少年らしい冒険や、ユーモアなどもあって、飽きないつくりになっている。
 あんまりいい話は苦手なんだけど、という人でも読めるだろう。オススメ。




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