ルイジアンヌ、こわいかい? これは、闇というものです。人間はむかし、こういうところで暮らしていたのです。きみの住む星は、光にあふれていましたか?
             
 「ルイジアンヌ」中山可穂(「はじまりは、恋」所収) TOKYO FM出版

 「ぼく」と友人のタケルがその宇宙人に出会ったのは、渋谷のセンター街。自動ドアをあけることが出来ず、困った顔をしていた彼女、ゲームセンターの電子音をまるで高原の風のように胸いっぱいに吸い込んでいる彼女に、ぼくとタケルはひと目で惹かれてしまったのだ。
 ことばの通じない少女にルイジアンヌという名前を適当につけて、ぼくとタケルはあちこちをまわる。奇妙な幸福感を胸に。
 中山可穂デビュー作(?)。いや、初期作品? とりあえず、本になった最初の物語ではあるが、これでプロになったわけではないですからね……
 TOKYO FMラジオが募集したショートストーリー。「ルイジアンヌ」はグランプリ作品。上限は原稿用紙20枚ということで、他の作品はイマイチというか、ただショートショートをひきのばした感じだったり、言葉足らずだったり、読んでいて、はっとする面白みには欠ける。ところが、この「ルイジアンヌ」は、「リズム感や透明感において、まさしくFM世代による作品ともいうべきもの」と絶賛されているだけある。中山可穂によって選び抜かれた言葉、リズムが収斂しているのだ。見事!
 ティプトリーの宇宙人と人類とのやりとりに少し似ているところがあるのは、テーマが「愛」だからだろうか。中山可穂ファンなら、ショートストーリー、しかもSF、ということだけでも稀少価値あり。ちなみに、佳作は狗飼恭子がとっている。



オススメ本リストへ