そのときは泣いても笑ってもどちらでも同じ気もちだった。ただどちらかをしていないと胸のなかでなにかが破れそうだったのだ。
          
「4TEEN」 石田衣良 新潮社

 早老症という病気を抱え、病院をいったり来たりしているナオト。小柄で頭のいいジュン。大きくて太っているダイ。そしてぼく、体重や病気や頭脳などといった飛びぬけたところがまるでない、テツロー。4人の14歳の少年たちの季節を描いた短編集である。頭の中はセックスのことがほとんどで、将来の不安とかやりきれなさとかを抱えながらも表面はかったるい感じでだらだらしていて。クラスには拒食症の女の子がいたり、妙に浮いちゃった野郎がいたり、ホモの噂を立てられた男の子がいたりする。そんな中、ジュンが不倫サイトで出会った人妻と深い仲になったり、ダイが酔っ払って暴力をふるってばかりいた親父を殺してしまったりする……――
 連作短編集。
 知り合いが、石田衣良の年齢を見てびっくりした(感性が若くて)、とのコメントを書いていたのだが、たしかに年齢の高い人が子どもを書いている、というズレや押しつけがあまり感じられない。その点、重松清よりもいっそすがすがしい。ただまあ逆に、わたしなどは、これを実際の14歳の少年はどう読むんだろう、というあたりが気になったりもするのだけれど。テツローは、自分をとりえのない普通の少年だと思っているようだけれど、この一歩ひいてしまっているような、「将来の自分」からの視点のように語られる「14歳の現在」をもっているのは特別なことだ。うん、そう……だから、むしろわたしは石田衣良の年齢にナットク。文章全体から漂ってくるのは、ノスタルジーといってもいいものだから。時代特有の固有名詞がわざと使われているが、それでも、いま14歳でない大人がこれを読んで感じるのは、懐かしさにも似たものだと思う。アラシや小池栄子といった名前を、自分の時代にいた別の芸能人にあてはめることが可能だから。だから、そういう意味で、中高生よりはむしろ、14歳をかつて経験したことのある大人にこそおススメしたい本である。懐かしい14歳の日々を思い出して読みたい一冊。



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