"Why did I marry you if you can't do the one thing I want most for you to do!"
"Look, I'll open it!."
        
Treasure Box    Orson Scott Card


「Treasure Box」。宝物箱? 題と表紙(もちろん作者にってことはいわずもがな)にひかれただけでなく、この本は最初の数行で目をひかれての購入。なにせ、こうだ。
Quentin Fears never told his parents the last thing his sister Lizzy said to him before they pulled the plug on her and let her die.
 主人公Quentinが11歳のとき、姉のLizzyが交通事故で植物状態になる。両親の説得にも耳を貸さず、脳死状態のLizzyの傍につきっきりで、生きている、死んでなんかいない……といいはるQuentinが最後に姉と交わした会話。それでもあたしはやっぱり死んでるのよ、と。そしてLizzyの身体からはプラグが抜かれ、その死後も、Quentinは姉が残した本によって彼女とつながりつづける。
 話は、そんな、亡き姉を理想の女性として追い求めたために、若くして大金持ちとなりながらなかなか女性に縁のなかったQuentinが、Madeleineという信じられないほど自分にぴったりの、美人と出会うことから本格的に始まる。完全で幸せな生活。けれど、彼がMadeleineの親族に会ったとき、様子はどんどんおかしくなるのだ。古めかしく奇妙な人々。そして、Madeleineの夫になった者しか開けないというTreasure Box 。箱の中にはいったいなにが隠されているのか、そして、Madeleineとはそもそも何者なのか……。
 とにかくおもしろい。読んでいる最中はわくわくと続きが待ちきれないし、恋愛小説としても楽しめるミステリ(SF?)だ。「Lost Boys」ではせつなく悲しかった死者との交信が、またこういう形で読める、ということもカードファンには興味のあるところ。
 しかし冒頭にあげた、Treasure Boxを開けろとせまるMadeleineの台詞。その前に(いろいろあって)Quentinが箱を開けるのをぐずっているせいもあるのですが、すごいと思いません?
 なお、カード作品はヤングアダルト並に英語は簡単なほうだと思います。読みやすい。エンダーシリーズとかだと汚いことばが連発されてしまったりもするのですが、この作品はそんなこともないし、オススメです。


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