"It's a pleasure to see you today." she said. "I appreciate your coming to see me."
There's a Boy in the Girls' Bathroom    Louis Sachar


Bradley Chalkersは嫌われ者だ。教室の一番後ろ、一番端の列に座り、隣にも前にも誰も座らない。先生まで、Bradleyの隣には誰も座りたがらない、と口にする。そんな彼の隣に座ることになった転校生のJeff。仲良くしようよ、と話しかけてきたJeffにむかってBradleyが口にした台詞は、 "Give me a dollar or I'll spit on you."。それでも辛抱強いJeffのおかげで、ふたりは少しずつ仲良くなる――なった、とBradleyは信じていた。けれど、実は嫌われ者のBradleyと一緒にいるせいで友だちが出来ない状況に、Jeff自身がうんざりしていたのだ。ちょっとしたことがきっかけで、Jeffは他の男の子たちと一緒にBradleyを嫌う側にまわる。
 物語は、Jeffとの友情をわくわく楽しみながらも、表面的にはひどいことしか口に出来ない、嫌われ者の行動しか出来ないBradleyが、スクール・カウンセラーのCarlaとのやりとりを通じて変わっていく様子が描かれている。学校ではどうせみんなが自分のことを嫌いなんだから、自分だって相手のことが大嫌いだ、とひどいことばかりするBradleyだが、家では壊れた人形を拾ってきて自分だけの世界をつくっているような優しい子だ。Carlaのことも、どうせ自分のことをだまそうとしているんだ、となかなかすなおに心はひらかない。それでも、「会えてうれしいわ」「今日は来てくれてどうもありがとう」と繰り返すCarlaに、いつしか自分の存在を認めてもらえることの素晴らしさを知っていくBradley。自分次第で周囲の状況も変えられることができるのではないかと――そう信じた矢先の残酷な出来事。
 いつものことだが練り上げられた構成のルイス・サッカー。しかし、他の話がユーモア中心だとしたら、この話は……泣ける。いわばこれは「シーラという子」の、子どもの側から書かれた話だ。彼がとっさにつく嘘や、いじわるや乱暴に、作者はあえてくだくだしい理由を書かない。それは読み手が理解することだからだ。
 背表紙にいわく、
"Sometime the hardest thing in the world is believing in yourself."
 英語のレベルとしては中学卒業程度だろうか。おそらく中学生でも読めるだろう。ぜひ手にとってもらいたい。泣ける一冊。献辞が"To Carla"であることにも注目したい。


(実はわたし、これを図書館に落とした。返却ポストに間違えてつっこんだのだ。そのことを次の日に思い出し、取りに行った。が。題が題。直訳すれば「女子トイレに男子がいる!」ですからね……。口にするのも恥ずかしかった。アメリカでの赤面する思い出である)


 邦訳されているようです。「トイレまちがえちゃった!」とはまたすごい題ですが……



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