"I know he hates baseball," she whispered, "but he couldn't hate you, Nick. Nobody could hate you."
The Secret Funeral Of Slim Jim The Snake
Elvira Woodruff
題のとおり、これは蛇のSlim Jimの葬式をあげちゃおうっていうお話。
Nickの両親はかれがまだ赤ん坊のころに交通事故で亡くなり、NickはおじのWalterが経営する葬儀場でともに暮らしている。おばさんのMargeは優しいし、年下のいとこEmilyはちょっとうるさいところもあるけど、まあ可愛い妹分。葬儀場で働いているVincentは親切でおもしろい。親友のBubsともうまくいっているのだけれど……でも、Walterはお父さんじゃない。Nickの死んだお父さんは長距離トラック運転手で、だからNickの夢も、大人になったら長距離トラック運転手になることだ。おじさんに怒られるたび、Nickはお父さんだったら部屋が汚くても叱らないし、家事の手伝いをしろなんていわないだろうし、と思ってばかりいる。だから、ある日見つけた、長距離トラック運転手必携の書、The Truckers' Road Atlasが10ドル99セントであることを知ると、どうしてもそれが欲しくなってしまう。そこで考えついたのが、あまり親しくはないが金持ちのクラスメート、Bernard Trauffmanの自分だけの特別なものが好きだという性格と、彼の大切なペットSlim Jimがつい最近死んだという事実である。おじさんの葬儀場で特別に10ドル99セントで葬式をあげてやる……と話を持ちかけたNick。さて、無事に葬式をあげることはできるのか。
でも、話はむしろ、葬式のことよりも、隣に住んできた少女がEmilyのことを、葬儀場に住んでいるなんてアダムズファミリーみたい、といじめたことで、Nickに他人とつきあうことや、自分を見る他人の目、他人を見る自分の目、などを考えさせたりすることのほうが中心になっているように思われる。冒頭にあげたのはEmilyの台詞。これだけ見たって、Nickがいかに恵まれた環境にいるか、伝わってくるというものだ。状況的にはハリー・ポッターと似ている(両親が死んで、おじさん夫婦に引き取られている)けれど、これはごく普通の男の子のお話。そして、彼がおじさんの気持ちにいつ、どんな風に気づくのか、そういう話でもある。それにしても蛇の葬式。意外な闖入者まであって、目が離せない。
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