"Because I was there."
"Where?"
            silent to the bone        e.l.konigsburg

親友のBranwellが、半分血のつながった(半分しか血のつながらない、というべきか)Nikkiを故意に傷つけたとして、矯正施設に送られてしまった。Nikkiは生死の境をさまようような昏睡状態。しかし、Branwellはなにがあったのか、どうしてそんなことをしたのか、それともしていないのか……を決して語ろうとはしない。親友とはいえ、その直前からわけあってややぎこちない関係になっていたConnorだったが、Branwellのところへ行って、なんとかその無実を証明することばを引き出そうとする。そして、ようやくコンタクトの手段を見つけた彼に与えられた最初のことばはMARGARET。Connorとは半分血のつながった(半分しか血のつながらない)姉の名前だった。訝しみながらも姉のもとへ訪れたConnorに、告げるMargaretの台詞。「だってわたしはそこにいたからよ」。どこに? いったい、彼女はどこにいたというのか。
 日本以上に離婚率の高いアメリカでは、半分しか血のつながらない兄弟姉妹は非常に多い。わたしの知っているある女の子は八人のステップブラザーとシスターがいるのだ、と教えてくれた。血のつながらない妹(弟)に愛情を抱けるのか。自分の父(または母)を奪った相手とのあいだにできた子どもを、嫉妬や憎しみなしに見ることができるのか。この話の中には、そんなメッセージも込められているように思う。BranwellとNikki以上に、この事件をきっかけに、以前以上に知りあっていくConnorとMargaret。年の離れていた姉が、自分と同じくらいの年齢のときにどれだけ傷ついたのか、そんなことを弟はようやく理解していくのだ。家族について、性について、さまざまなことがさりげない筆致で描かれた中高生向きの作品。
 作者名が小文字なんておもしろい、とか、New York Times Bestsellerだし、なんて理由で読んだ本だったが、あとになって気づいてみれば「クローディアの秘密」などで日本でもよく知られているE.L.カニグズバーグだった。検索をかけたら「十三歳の沈黙(岩波書店)」という作品があるのだが、たぶん、この作品の邦訳ではないかと思われる(実際に手にしたことはない)。


 書店で手にとりました。間違いなく、「十三歳の沈黙」が邦訳作品のようです。




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