" Your Doppelganger will regurgitate on your soul!"
                  The Boy Who Lost His Face       Louis Sachar


David Ballinger。2年生のときから親友だったScottは、学校で人気者のRogerとRandyのふたりと付き合うようになってから、Davidのことはラストネームでしか呼ばない。Davidは彼らのすることを完全にいいと思っているわけではないし、ぜんぜん違うことだって考えているのに……彼らみたいに人気者で、Coolになりたいと思うばかりに、孤独な老婦人(しかし彼女は自分の夫の顔をとってしまい、壁にかけている魔女でもあるらしい……)だと思われるMrs. Bayfieldの家に彼らとともに行き、窓ガラスを割り、花壇を荒し、彼女の座っている椅子をひっくりかえし、彼女の下着を見てしまい、彼女の頭の上にレモネードをかぶせ(ほとんどはDavid以外の三人がやったのだが)てしまう。そして最後に、他に何もすることのなかったDavidが彼女に中指を立てたとき、彼女が叫んだのだ。
 " Your Doppelganger will regurgitate on your soul!"
 なんていわれたのか、意味なんてさっぱりわからない。でも、その日、Davidは呪われたのだ。家の窓ガラスを割ってしまい、教室で椅子をひっくりかえし……次々に起こる、呪い。だが、ほんとうに? これはほんとうにMrs. Bayfieldの呪いなのか? 科学者の父を持ち、論理的なことを愛するDavidは複雑な気分になる。呪いなんて本当にあるんだろうか、と。でも、これがもし呪いでないのなら……ただ単に彼がダサイやつってだけになってしまう。
 学校の人気者の仲間になるどころの話ではない。Rogerたちとは決別し、彼らに笑いものにされ、しかも長い髪に青いサングラスをかけているLarry、女の子なのに男の子みたいなMoのふたりと三人組としてバカにされる。そしてついにはDavidを尊敬し、あがめたてまつっていたような弟のRickyからもきらわれてしまうのだ。わずかな救いは密かにこころを寄せているToriだけだが、そのToriまでがRandyとつきあってるみたいで……――
 数あるLouis Sachar作品の中でもイチ推しの作品である。
 完全に信じたわけでもない呪いだが、しかし呪われていないとなると、自分がダメ人間だってだけになるのでそれもいや。複雑な気持ちがよく現れているし、世界のあちこちに住んだことがあるというLarryの嘘だか本当だかわからない台詞もよい。特に、Davidにむかって、こんな説明をするところ。
"When you don't stand up for yourself, the Japanese say you lose face."
 顔を失うってのは、面目を失うってことなんだ、っていう説明は、なるほど! と。
 次から次に降りかかってくる災難。そして、最後はちょっぴり涙ぐんでしまうほどやさしラスト。Davidの話がすべて終わってから150年後の話に続くのも、よい。
 いつの時代も変わらぬものは……といったところなのだろうか。
 絶対のオススメである。読み逃したら損ですよ。



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