"We thought you knew what you were doing!" shouted Ron, standing up, and his words pierced Harry like scalding knives. "We thought Dumbledore had told you what to do, we thought you had a real plan!"
          
    Harry Potter and The Deathly Hallows    J・K・Rowling


 ということで、前作までを読んでいない人にネタバレしないようなるべく気をつけながらご紹介するが……(それって限りなく難しい。が、3巻くらいまでしか読んでいない人が間違ってこれを読んでしまってショックをうけてもまずいしね)
 Voldemoteとの対決のためにHorcruxを探し出し、その中に封印されたVoldemoteの魂を破壊しようとするHarry, Ron, Hermione. だが、Harryの17歳の誕生日がすぎ、対決の日は目の前に迫っているというのに、実際には、Horcrux がどんな形で、どこにあるかは明らかではない。そもそも、Dumbledoreから三人に与えられたそれぞれの品……RonにはDeluminator、HermioneにはThe Tales of Beedle the Bardという児童書、そしてHarryには、最初のQuidditchの試合でHarryが捕まえたSnitch……これのどこに何の意味があるのか? しかも三人が姿を隠して旅を続けるあいだに、世間では他ならぬDumbledoreが若い頃にDark Artにはまり、Mugglesを差別したという噂が流れていた。なにを信じていいのかわからなくなるHarry。しかも、そんな悩みを抱えながら、計画性のない旅を続けるHarryたちのあいだには、手にしたHorcruxの悪影響でぎすぎすした空気が流れ、協力して探索を続けることさえ難しくなっていた……
 最後の最後まで喧嘩か! と、この三人にはあきれちゃいますね(笑)。ここまで一緒に生活していたら、Harryがぐちぐち思い悩む性格だとか、Ronがひがみっぽいとか、わかりそうなもんだろうに……なんか、1、2巻当時に戻ってしまった感もあって、もう少し大人になってもいいんじゃない? って気も。
 ……それにしても、今回はばたばた簡単に人が死にます。最終的には50人以上がお亡くなりになりますので、書き方も非常にさらりとしていて、「こんなにあっさり書かれているんだから実は生きているんだろう」とさえ思ってしまうほど。1巻の段階で最終巻が出来上がっていたといわれるだけあって、1〜6巻の主要人物、主要エピソードで無駄なものは何ひとつなかった! というくらいに、がんがん絡んできます(し、死にます。2巻登場の××が死んだときには、思わず涙……)。これまでのすべてが、この巻のための伏線であったといって過言ではありません。ということで、逆にいえば、これまでの巻を読んでいない(あるいは忘れてしまった)という状況では、最終巻を楽しむことは難しいでしょう。地名、人名、魔法用語が、解説もなくばしばし出てきますので……時間のある人は、事前に1〜6巻を読み返しておくことをオススメ。
 さて。今回は、Dumbledoreについての悪い噂が流れ、自分はほんとうのDumbledoreを知ってたんだろうか、とか、どうしてちゃんといろんなことを教えておいてくれなかったんだろうか、とかHarryが悩むところがひとつの見せ場(というか、このことについては1巻当初からいわれてはいましたよね。わざとHarryを危ない目にあわせてるんじゃないかとか……)。そしてもう一つは、なんてったって、Snapeがほんとうはいい人なの悪い人なの? っていう、1巻からの永遠の謎が明らかになるところが重要部分。いい人なんだったら、××を殺したことに意味がないとまずいわけだし、悪い人なら、なんでそのことにDumbledoreが気づかなかったの、ってことにもふれないとまずいわけだし、作者としても書きがいのあったところではないかと思います。魅力ある悪役、という意味で、Snapeってほんとにいい役だと思うわ……
 スピード感のある出だしの割に、なんだか結婚式とかなにやらでいきなりなごんでしまうため、途中までだらだら読んでいましたが、半ばすぎからは一気読み。壮大な物語の最後を、ぜひ。
(といっても、わたしの周囲では途中巻挫折者が非常に多いのよねー……日本語でも英語でも。あー、でも誰かと語りたい!)




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